後の世を嘆く涙と言ひなして
しぼりやせまし墨染の袖
- 歌の意味
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来世を思って嘆く涙だと言いつくろって、この墨染の袖をしぼろうか。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 1102
詞書「入道前関白右大臣に侍りける時、百首歌人々によませ侍りけるに、忍恋の心を」
「後の世」を詠む二首の一首目である。出家した身の者が、恋の涙を来世を思って嘆く涙だと言いつくろって、墨染の袖をしぼろうかと詠む。詞書によれば、入道前関白が右大臣であった頃に人々に詠ませた百首歌のうち、「忍恋」を題とする歌である。
作者の「大宰大弐重家」は藤原重家である。左京大夫藤原顕輔の子で、大宰大弐を務め、のちに出家した。
詞書の「入道前関白」は九条兼実で、右大臣であった頃に百首歌を催した。
初句「後の世を」は、来世を、の意である。次歌も「後の世まで」と詠み、同じ語で二首が結ばれている。
二句「嘆く涙と」は、来世を思って嘆く涙だと、の意で、仏道に入った者の涙として恋の涙を偽る。
三句「言ひなして」は、ことさらにそう言いつくろって、の意である。
四句「しぼりやせまし」は、しぼろうかしら、の意で、係助詞「や」を受けて、ためらいを表す助動詞「まし」の連体形で結ぶ。
結句「墨染の袖」は、僧衣の黒い袖で、体言止めで結ばれる。忍ぶ恋の題を出家者の姿を借りて詠み、墨染の袖を濡らす涙の出どころを偽るという趣向で示している。
いひなす:ことさらにそうだと言いつくろう
すみぞめ:墨で染めたような黒い色の僧衣
- 作者
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藤原重家
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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草深き夏野分け行くさを鹿の 音をこそ立てね露ぞこぼるる
- 次の歌
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玉梓の通ふばかりに慰めて 後の世までの恨み残すな