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思ひあまりそなたの空を眺むれば
霞を分けて春雨ぞ降る

歌の意味
思いが胸に収まりきらず、あなたのいる方の空を眺めると、霞を分けるようにして春雨が降っている。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 1107

詞書「雨降る日、女に遣はしける」
 「ながめ」を詠む一連の四首目である。思いあまってあなたのいる方の空を眺めると、霞を分けて春雨が降っていると詠む。詞書によれば、雨の降る日に女に贈った歌である。
 作者の「皇太后宮大夫俊成」は藤原俊成である。権中納言藤原俊忠の子で、後白河院の命により『千載和歌集』を撰進した。藤原定家の父である。

 初句「思ひあまり」は、思いが胸に収まりきらず、の意で、六音の字余りである。
 二句「そなたの空を」は、あなたのいる方の空を、の意である。前歌の「夕暮の空」を受け、空を眺める歌が続けられる。
 三句「眺むれば」は、眺めると、の意で、已然形に「ば」が付いた確定条件である。本巻の第千百四首から「ながめ」を詠み継いできた一連の四首目にあたる。
 四句「霞を分けて」は、立ちこめる霞を分けるようにして、の意である。
 結句「春雨ぞ降る」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「降る」で結ぶ係り結びである。相手のいる方の空から降る春雨に、思いあまった心が重ねられ、雨の日に女へ贈る歌として結ばれている。

そなた:あなたのいる方
作者
藤原俊成
出典
新古今和歌集
前の歌
眺めわびそれとはなしにものぞ思ふ 雲のはたての夕暮の空
次の歌
山賤の麻のさ衣筬を荒み あはで月日やすぎ葺ける庵