白玉か露かと問はむ人もがな
物思ふ袖をさして答へむ
- 歌の意味
-
白玉か露かと尋ねてくれる人がいてほしい。そうしたら、物思いの涙に濡れた袖を指さして答えよう。
- 鑑賞
-
巻第十二 恋歌二 1112
詞書「題しらず」
露と涙を詠む三首の三首目である。白玉か露かと尋ねる人がいてほしい、物思いの涙に濡れた袖を指して答えようと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は藤原元真で、平安時代中期の歌人である。三十六歌仙の一人に数えられる。
『伊勢物語』六段の「白玉か何ぞと人の問ひし時露と答へて消えなましものを」を踏まえる。
初句「白玉か」は、白玉であろうか、の意で、白玉は真珠のことである。『伊勢物語』の歌の初句と同じである。
二句「露かと問はむ」は、露であろうかと尋ねるような、の意である。前歌までの露を受け、露が涙のたとえとして続けられる。
三句「人もがな」は、人がいてほしい、の意で、「もがな」は願望を表す。三句切れである。
四句「物思ふ袖を」は、恋の物思いの涙に濡れた袖を、の意である。
結句「さして答へむ」は、指さして答えよう、の意で、「む」は意志を表す。『伊勢物語』では露と答えて消えればよかったと嘆いたのに対し、ここでは白玉とも露とも見える涙を袖に示して答えようと、問われることをむしろ望んでいる。
しらたま:白い玉、真珠
さす:指さす
- 作者
-
藤原元真
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
散らすなよ篠の葉草のかりにても 露かかるべき袖の上かは
- 次の歌
-
いつまでも命も知らぬ世の中に つらき嘆きのやまずもあるかな