いつとなく塩焼く海人の苫庇
久しくなりぬ逢はぬ思ひは
- 歌の意味
-
いつということもなく塩を焼き続ける海人の苫葺きの庇ではないが、久しくなってしまった、逢えないでいる思いは。
- 鑑賞
-
巻第十二 恋歌二 1115
詞書「入道前関白家に百首歌よみ侍りける時、逢はぬ恋といふ心を」
塩焼く海人に寄せて恋を詠む三首の一首目である。いつということもなく塩を焼く海人の苫庇のように、逢えない思いは久しくなってしまったと詠む。詞書によれば、入道前関白の家で百首歌を詠んだ折に、「逢はぬ恋」を題として詠まれた。
作者は藤原基輔で、呼称の「朝臣」は五位以上の官人に付ける敬称である。平安時代後期の廷臣である。
詞書の「入道前関白」は九条兼実である。
初句「いつとなく」は、いつということもなく、いつも、の意である。
二句「塩焼く海人の」は、塩を焼く海人の、の意である。本巻の第千八十二首や第千八十三首に続き、塩を焼く海人の景物がふたたび詠まれる。
三句「苫庇」は、苫で葺いた粗末な家の庇である。ここまでが、「ひさし」と同じ音をもつ四句の「久しく」を導く序詞となる。
四句「久しくなりぬ」は、長い時が経ってしまった、の意で、四句切れである。前歌の年の積もる嘆きを受けて、逢えぬまま時が経つことが続けて詠まれる。
結句「逢はぬ思ひは」は、逢えない思いは、の意で、倒置によって四句の主語が結句に置かれている。題の「逢はぬ恋」を結句で示している。
とま:菅や茅を編んで屋根や覆いにしたもの
とまびさし:苫で葺いた家の庇
- 作者
-
藤原基輔
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
わが恋は千木の片削ぎかたくのみ 行き合はで年の積もりぬるかな
- 次の歌
-
藻塩焼く海人の磯屋の夕煙 立つ名も苦しおもひ絶えなで