ありとても逢はぬためしのなとり川
朽ちだに果てね瀬々の埋もれ木
- 歌の意味
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生きていても逢えない例として評判になった名取川の、瀬々に沈んだ埋もれ木のようなわが身よ。せめて朽ち果ててしまえ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 1118
詞書「摂政太政大臣家歌合によみ侍りける」
名取川の埋もれ木に寄せて恋を詠む二首の一首目である。生きていても逢えない例として名を取った名取川の、瀬々の埋もれ木のような身よ、せめて朽ち果ててしまえと詠む。詞書によれば、摂政太政大臣藤原良経の家の歌合での詠である。
作者は寂蓮で、呼称の「法師」は僧を指す。俗名は藤原定長で、藤原俊成の甥にあたり、その養子となった。『新古今和歌集』の撰者に選ばれたが、完成を見ずに世を去った。
名取川は陸奥国(宮城県名取市)の歌枕で、川底に沈んだ埋もれ木とともに詠まれた。『古今和歌集』のよみ人しらずの歌「名取川瀬々の埋もれ木あらはればいかにせむとか逢ひ見そめけむ」を本歌とする。
初句「ありとても」は、生きていても、の意である。
二句「逢はぬためしの」は、逢えないことの例としての、の意である。
三句「なとり川」の「なとり」には、逢えない例として「名を取る(評判になる)」意と、地名の「名取川」が掛けられている。
四句「朽ちだに果てね」は、せめて朽ち果ててしまえ、の意で、「だに」は最小限の願い、「ね」は完了の助動詞「ぬ」の命令形である。四句切れで、倒置によって結句の「埋もれ木」へ呼びかける。
結句「瀬々の埋もれ木」は、川のあちこちの瀬に沈んだ埋もれ木で、体言止めで結ばれる。本歌の二句をそのまま取り、本歌では埋もれ木が現れることを恐れたのに対し、ここでは現れることもないまま朽ちてしまえと願う。次歌も同じ名取川の埋もれ木を詠み、二首が並べられている。
なとり:評判になる意の「名取る」と、地名の名取を掛ける
うもれぎ:長く水中や土中に埋もれていた木、世に知られず朽ちてゆく身のたとえ
せぜ:あちこちの瀬
- 作者
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寂蓮
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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須磨の海人の袖に吹きこす潮風の なるとはすれど手にもたまらず
- 次の歌
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嘆かずよ今はた同じなとり川 瀬々の埋もれ木朽ち果てぬとも