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忍びあまり落つる涙を堰きかへし
押さふる袖よ憂き名漏らすな

歌の意味
忍びきれずに落ちる涙を堰き返して押さえている袖よ、つらい浮き名を漏らしてくれるな。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 1122

詞書「恋歌とてよめる」
 袖と涙を詠む一連の三首目である。忍びきれずに落ちる涙を堰き返して押さえる袖に向かい、浮き名を漏らしてくれるなと呼びかける。詞書によれば恋の歌として詠まれたもので、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「よみ人しらず」は、作者の名が伝わらないことを示す。

 初句「忍びあまり」は、忍びきれずに、の意で、六音の字余りである。本巻の第千百二十九首も同じ初句で始まる。
 二句「落つる涙を」は、こぼれ落ちる涙を、の意である。
 三句「堰きかへし」は、堰き止めて押し返し、の意である。前歌までの堰く袖、涙に染まる袖を受け、涙を押し返す袖が詠まれる。
 四句「押さふる袖よ」は、涙を押さえる袖よ、の意で、袖に呼びかける。前歌の「袖の色」が恋を知らせる袖であったのに対し、ここでは恋を隠すための袖であり、二首が反転した構図で並ぶ。
 結句「憂き名漏らすな」は、つらい浮き名を漏らすな、の意で、禁止の「な」で結ぶ。本巻の第千八十七首の「もらすなよ」と同じく、「漏らす」ことを禁じて忍ぶ恋を守ろうとしている。

せきかへす:せき止めて押し返す
うきな:恋についての好ましくない評判、浮き名
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
前の歌
よそながらあやしとだにも思へかし 恋せぬ人の袖の色かは
次の歌
紅に涙の色のなりゆくを いくしほまでと君に問はばや