忍びあまり天の川瀬に言寄せん
せめては秋を忘れだにすな
- 歌の意味
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忍びきれずに、天の川の瀬にことよせて思いを伝えよう。せめて年に一度逢う秋だけは、忘れることさえしないでほしい。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 1129
詞書「隔河忍恋といふことを」
待つ恋を詠む三首の二首目である。忍びきれずに七夕の天の川にことよせて思いを伝えよう、せめて年に一度の逢瀬の秋だけは忘れるなと詠む。詞書によれば、「隔河忍恋」(河を隔つる忍ぶ恋)を題として詠まれた。
作者の「正三位経家」は藤原経家である。大宰大弐藤原重家の子で、六条藤家の歌人である。
七夕は、七月七日の夜に牽牛と織女が天の川を渡って年に一度逢うという伝説にもとづく行事である。
初句「忍びあまり」は、忍びきれずに、の意で、六音の字余りである。本巻の第千百二十二首と同じ初句である。
二句「天の川瀬に」は、天の川の瀬に、の意で、題の「河を隔つる」を七夕の天の川に取りなしている。
三句「言寄せん」は、ことよせよう、かこつけよう、の意で、「ん」は意志を表す。三句切れである。忍ぶ恋を直接には言えないため、七夕の逢瀬にかこつけて思いを伝えようとする。
四句「せめては秋を」は、せめて秋だけは、の意である。秋は七夕の逢瀬の季節で、年に一度でも逢う時をいう。
結句「忘れだにすな」は、忘れることだけはするな、の意で、「だに」は最小限の願い、「な」は禁止を表す。牽牛と織女のように年に一度でも逢うことを願い、前歌の訪れのない待つ恋に対し、せめてもの逢瀬を求めている。
ことよす:かこつける、ほかのことを口実にする
- 作者
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藤原経家
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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頼めおきし浅茅が露に秋かけて 木の葉降りしく宿の通ひ路
- 次の歌
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頼めても遥けかるべきかへる山 幾重の雲のうちに待つらん