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逢ふことはいつといぶきの峰に生ふる
さしも絶えせぬおもひなりけり

歌の意味
逢うことはいつと言うのか、分からない。伊吹の峰に生えるさしも草が燃えるように、それほどまでに絶えることのない思いの火であった。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 1131

詞書「摂政太政大臣家百首歌合に」
 燃える思いを山に寄せて詠む二首の一首目である。逢うのはいつとも知れないが、伊吹の峰に生えるさしも草のように、それほど絶えることのない思いの火であると詠む。詞書によれば、摂政太政大臣藤原良経の家で催された百首歌合での詠である。
 作者の「中宮大夫家房」は藤原家房である。関白松殿基房の子で、中宮大夫を務めた。
 この百首歌合は、建久四年(1193)に良経が催した六百番歌合を指す。伊吹山は、さしも草(よもぎ)とともに詠まれる歌枕である。『後拾遺和歌集』の藤原実方の歌「かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを」を本歌とする。

 初句「逢ふことは」は、逢うことは、の意である。本巻の第千百十首も同じ初句で、逢うことの難さを地名に掛けて詠んでいた。
 二句「いつといぶきの」の「いぶき」には、いつと「言ふ」の意と、地名の「伊吹」が掛けられている。
 三句「峰に生ふる」は、峰に生えている、の意で、六音の字余りである。ここまでが四句の「さしも」を導く。
 四句「さしも絶えせぬ」の「さしも」には、伊吹の名産の「さしも草」と、「さしも(それほどまでに)」の意が掛けられている。本歌も「さしも草」と「さしも」を重ねており、その技巧を取っている。
 結句「おもひなりけり」の「おもひ」には、恋の「思ひ」と「火」が掛けられ、灸に用いて燃やすさしも草と縁語で結ばれる。次歌も同じ結句「おもひなりけり」で結ばれ、二首が同じ結句で並べられている。

いぶき:いつと言う意の「言ふ」と、地名の伊吹を掛ける
さしも:さしも草の意と、それほどまでにの意を掛ける
さしもぐさ:よもぎ、灸に用いるもぐさの原料
おもひ:恋の思いの意と、火の意を掛ける
作者
藤原家房
出典
新古今和歌集
前の歌
頼めても遥けかるべきかへる山 幾重の雲のうちに待つらん
次の歌
富士の嶺の煙もなほぞ立ちのぼる 上なきものはおもひなりけり