なき名のみたつたの山に立つ雲の
ゆくへも知らぬ眺めをぞする
- 歌の意味
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根も葉もない浮き名ばかりが立つ。その竜田山に立つ雲のように、行方も知れない物思いに沈んで、ぼんやりと眺めていることだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 1133
詞書「名立恋といふ心をよみ侍りける」
雲に寄せて恋を詠む三首の一首目である。根も葉もない浮き名ばかりが立ち、竜田山に立つ雲のように、行方も知れない物思いにふけると詠む。詞書によれば、「名立恋」(名の立つ恋)を題として詠まれた。
作者の「権中納言俊忠」は藤原俊忠である。大納言藤原忠家の子で、権中納言に至った。藤原俊成の父である。
竜田山は大和国(奈良県生駒郡三郷町付近)の歌枕で、紅葉や、立つ雲、白波とともに詠まれた。
初句「なき名のみ」は、根拠のない評判ばかりが、の意で、「のみ」が限定を表す。
二句「たつたの山に」の「たつ」には、浮き名が「立つ」意と、地名の「竜田」が掛けられている。
三句「立つ雲の」は、立ちのぼる雲の、の意で、二句の「たつ」を受けて同じ語を重ね、雲の立つさまへと転じる。ここまでが四句の「ゆくへも知らぬ」を導く。
四句「ゆくへも知らぬ」は、行方も分からない、の意で、流れゆく雲の行方と、恋の行く末の分からなさを重ねる。本巻の第千百三十五首も同じ句を四句に置き、雲に寄せる恋の三首を結んでいる。
結句「眺めをぞする」は、物思いに沈んで眺めることをする、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「する」で結ぶ。本巻の第千百四首から続いた「ながめ」の語がここにも現れ、浮き名に悩む物思いとして詠まれている。
なきな:事実無根の評判
たつ:浮き名が立つ意と、地名の竜田を掛ける
ながめ:物思いに沈んでぼんやりと見やること
- 作者
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藤原俊忠
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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富士の嶺の煙もなほぞ立ちのぼる 上なきものはおもひなりけり
- 次の歌
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逢ふことのむなしき空のうき雲は 身を知る雨のたよりなりけり