- 歌の意味
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あの人の面影のように霞んで見える月が、宿っていた。春は昔の春ではないのかと嘆いて流す、袖の涙に。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 1136
詞書「水無瀬恋十五首歌合に、春恋の心を」
季節に寄せて恋を詠む二首の一首目である。春は昔のままではないのかと嘆く袖の涙に、恋しい人の面影のように霞む月が宿っていたと詠む。詞書によれば、水無瀬恋十五首歌合で「春恋」を題として詠まれた。
作者の「皇太后宮大夫俊成女」は藤原俊成女である。皇太后宮大夫であった藤原俊成の娘の意の呼称だが、実際は俊成の孫にあたり、藤原盛頼の娘で俊成の養女となった。後鳥羽院の歌壇で活躍した。
水無瀬恋十五首歌合は、建仁二年(1202)に後鳥羽院が催した歌合である。『古今和歌集』の在原業平の歌「月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして」を本歌とする。
初句「面影の」は、恋しい人の面影が、の意である。
二句「かすめる月ぞ」は、霞んでいる月が、の意で、係助詞「ぞ」が三句の連体形「宿りける」と係り結びをなす。春の霞にかすむ月に、ぼんやりと浮かぶ恋しい人の面影が重ねられ、題の「春恋」の春が示される。
三句「宿りける」は、宿っていた、の意で、三句切れである。倒置によって、月の宿る場所が結句の「袖の涙に」で明かされる。
四句「春や昔の」は、本歌の二句をそのまま取る。春は昔の春ではないのか、と変わってしまった恋を嘆く業平の歌の心を借りている。
結句「袖の涙に」は、袖を濡らす涙に、の意で、涙に月が映って宿るさまをいう。本巻の第千百三十九首も袖の上に宿る月を詠み、涙に宿る月の趣向が響き合う。
おもかげ:目の前にいるかのように心に浮かぶ姿
かすむ:霞がかかってぼんやり見える
やどる:水や涙などに影が映る
- 作者
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藤原俊成女
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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わが恋は逢ふを限りの頼みだに ゆくへも知らぬ空のうき雲
- 次の歌
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床の霜枕の氷消えわびぬ 結びもおかぬ人の契りに