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つれなさのたぐひまでやはつらからぬ
月をもめでじ有明の空

歌の意味
あの人のつれなさに似たものまでが、つらくないことがあろうか。だから月をも愛でまい、つれなく空に残る有明の月を。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 1138

詞書「摂政太政大臣家百首歌合に、暁恋」
 月を詠む二首の一首目である。相手のつれなさに似たものまでつらいので、つれなく空に残る有明の月をも愛でまいと詠む。詞書によれば、摂政太政大臣藤原良経の家の百首歌合で「暁恋」を題として詠まれた。
 作者の「有家朝臣」は藤原有家である。大宰大弐藤原重家の子で、『新古今和歌集』の撰者の一人となった。
 この百首歌合は、建久四年(1193)に良経が催した六百番歌合を指す。『古今和歌集』の壬生忠岑の歌「有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし」を本歌とする。

 初句「つれなさの」は、あの人のつれなさの、の意である。
 二句「たぐひまでやは」は、それに類するものまで、の意で、係助詞「やは」が反語を表し、三句の「つらからぬ」で結ぶ。
 三句「つらからぬ」は、つらくないことがあろうか、いやつらい、の意で、三句切れである。相手のつれなさに似たものまでがつらいとする。
 四句「月をもめでじ」は、月をも愛でまい、の意で、打消意志の「じ」で四句切れとなる。本歌の「有明のつれなく見えし」を受け、つれなく見える有明の月も、つれなさの類として愛でまいとする。
 結句「有明の空」は、夜が明けても月の残る空で、体言止めで結ばれ、題の「暁恋」の暁を示す。月を賞でるという歌の通念に対し、つれない人に似るゆえに月をも愛でないと理屈を差し向けている。

たぐひ:同じ類のもの
めづ:賞美する、愛でる
ありあけ:月が空に残ったまま夜が明けるころ
作者
藤原有家
出典
新古今和歌集
前の歌
床の霜枕の氷消えわびぬ 結びもおかぬ人の契りに
次の歌
袖の上に誰ゆゑ月は宿るぞと よそになしても人の問へかし