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かりそめにふしみの野辺の草枕
露かかりきと人に語るな

歌の意味
ほんのかりそめに伏見の野辺に臥して見た草枕の旅寝、その草枕に露がかかったなどと、人に語ってはいけない。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1165

詞書「題しらず」
 逢瀬が人に知られることを恐れる一連の一首目である。かりそめに伏見の野辺で臥した草枕、その草枕に露がかかったなどと人に語ってくれるな、と詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「読人しらず」は、作者の名が伝わらないことを示す。
 伏見は歌枕で、「臥し見る」の意を掛けて詠まれることが多い。

 初句「かりそめに」は、ほんの一時の、仮初めに、の意である。一夜限りの仮の逢瀬であることを示す。
 二句「ふしみの野辺の」の「ふしみ」は、地名の伏見に、臥して見る意を掛ける掛詞である。野辺に臥した仮の共寝を思わせる。
 三句「草枕」は旅寝のことで、ここでは野辺での仮の共寝をいう。本巻の第千百五十首も、仮の宿りでの一夜を草枕と詠んでいた。
 四句「露かかりきと」は、露がかかった、と、の意で、「き」は過去の助動詞である。草枕に置く露に、涙に濡れたこと、また逢瀬があったことを重ねる。
 結句「人に語るな」は、本巻の第千百五十九首、第千百六十一首の二句と同じ句である。夢の一連で繰り返された口止めの句がここでは結句に置かれ、逢瀬が人に知られることを恐れる歌へと主題が移る。

ふしみ:地名の伏見に、臥して見る意を掛ける
くさまくら:旅寝。ここでは野辺での仮の共寝
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
前の歌
蘆の屋の倭文機帯の片結び 心やすくもうちとくるかな
次の歌
いかにせん葛の裏吹く秋風に 下葉の露の隠れなき身を