あけがたき二見の浦による波の
袖のみ濡れておきつ島人
- 歌の意味
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戸を開けてもらえず、明けがたい長い夜、二見の浦に寄せる波のように寄っていっても、袖ばかりが濡れて、起きたまま夜を明かす私は、沖の島に住む人のようだ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 1167
詞書「題しらず」
夜明けの別れを詠む一連の一首目である。戸を開けてもらえないまま明けがたい夜を過ごし、二見の浦に寄る波のように寄っていっても袖ばかり濡れて、起きたままの私は沖の島人のようだ、と詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「実方朝臣」は藤原実方である。左大臣藤原師尹の孫で、侍従藤原定時の子である。左近衛中将から陸奥守となり、任地で没した。中古三十六歌仙の一人である。
二見の浦は伊勢国の歌枕である。「二見」の名は箱の蓋と身に通じるとして、「開く」「明く」と結びつけて詠まれる。
初句「あけがたき」の「あけ」は、夜が明ける意と、戸を開ける意を掛ける掛詞である。夜が明けにくい長い夜であり、女が戸を開けてくれないことでもある。
二句「二見の浦に」は、箱の蓋と身に通じる地名で、初句の「開け」と縁語をなす。
三句「よる波の」の「よる」は、波が寄る意と、夜の意を掛ける掛詞である。女のもとへ寄ってゆく身を、浦に寄せる波にたとえている。
四句「袖のみ濡れて」は、袖ばかりが濡れて、の意である。波に濡れる袖に、逢えずに流す涙を重ねる。
結句「おきつ島人」の「おき」は、沖の意と、起きている意を掛ける掛詞である。沖の島に住む人のように、寝ることもできず起きて夜を明かす身を体言止めで示す。浦、波、沖、島人が縁語として連なり、次歌の「あけぬ夜ながら明けぬれば」へと、明けと開けを重ねる趣向が続いている。
あく:夜が明ける意と、戸を開ける意を掛ける
よる:波が寄る意と、夜の意を掛ける
おき:沖の意と、起きている意を掛ける
しまびと:島に住む人
- 作者
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藤原実方
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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いかにせん葛の裏吹く秋風に 下葉の露の隠れなき身を
- 次の歌
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逢ふことのあけぬ夜ながら明けぬれば 我こそ帰れ心やは行く