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心にもあらぬ我が身の行き帰り
道の空にて消えぬべきかな

歌の意味
自分の心にもなく、逢えずに行っては帰る我が身は、その道の途中で消えてしまいそうだ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1170

詞書「題しらず」
 夜明けの別れを詠む一連の四首目である。自分の心にもなく、逢えずに行っては帰る我が身は、その道の途中で消えてしまいそうだと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「道信朝臣」は藤原道信である。太政大臣藤原為光の子で、藤原兼家の養子となった。若くして没した。中古三十六歌仙の一人である。

 初句「心にも」は、自分の心にも、の意である。
 二句「あらぬ我が身の」は、心にもない我が身の、の意で、初句と合わせて、思いに反して帰らねばならない身を示す。前歌の「やすらひかねて」と同じく、逢えぬまま帰る者の嘆きである。
 三句「行き帰り」は、行っては帰ること、の意である。前歌の「帰りにしかな」を受け、行き帰りを繰り返す身の嘆きとなる。
 四句「道の空にて」は、道の途中で、の意である。「空」は途上の意であるとともに、上の空の心地を思わせる。
 結句「消えぬべきかな」は、消えてしまいそうだ、の意である。「ぬべし」は強い推量で、身が消え入るというこの表現は、次歌以下の露と消える身の歌へとつながっている。

みちのそら:道の途中。途上
作者
藤原道信
出典
新古今和歌集
前の歌
秋の夜の有明の月の入るまでに やすらひかねて帰りにしかな
次の歌
はかなくも明けにけるかな朝露の おきての後ぞ消えまさりける