朝露のおきつる空も思ほえず
消えかへりつる心惑ひに
- 歌の意味
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朝露が置くころに起きて別れたときのことも、何も覚えていない。すっかり消え入ってしまった心の惑いのために。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 1172
詞書「御返し」
夜明けの別れを詠む一連の六首目で、前歌への返歌である。朝露が置くころに起きて別れたときのことも覚えていない、消え入るばかりの心の惑いのために、と詠む。
作者の「更衣源周子」は、右大弁源唱の娘で、醍醐天皇の更衣となり、近江更衣と呼ばれた。源高明らの母である。
初句「朝露の」は、前歌の三句「朝露の」をそのまま受ける。返歌として相手の語を用いて応じている。
二句「おきつる空も」の「おき」は、前歌と同じく、露が置く意と、起きる意を掛ける掛詞である。「空」は、その時の心地、様子の意である。
三句「思ほえず」は、覚えていない、の意で、三句切れとなる。起きて別れたときのことも分からないほど心が乱れていたことを示す。
四句「消えかへりつる」は、すっかり消え入ってしまった、の意である。前歌の「消えまさりける」を受け、それ以上に消え入ったと応じている。
結句「心惑ひに」は、心の惑いのために、の意で、三句の「思ほえず」の理由を倒置して示す。帝の「消えまさりける」に対し、自分はそれどころではなく消え入る思いであったと返す、贈答の呼吸が見える。
おく:露が置く意と、寝床から起きる意を掛ける
おもほゆ:自然と思われる。記憶にある
きえかへる:すっかり消え入る。ひどく思い乱れる
- 作者
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源周子
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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はかなくも明けにけるかな朝露の おきての後ぞ消えまさりける
- 次の歌
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置き添ふる露やいかなる露ならん 今は消えねと思ふ我が身を