またも来ん秋をたのむの雁だにも
鳴きてぞ帰る春の曙
- 歌の意味
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また来る秋をあてにしている田の面の雁でさえも、鳴いて帰ってゆく、春の曙であることよ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 1186
詞書「後朝の恋の心を」
後朝の思いを詠む一連の十首目である。また来る秋をあてにできる田の面の雁でさえも、鳴いて北へ帰ってゆく春の曙であると詠み、再会のあてもなく別れる者の悲しみを言外に示す。詞書によれば、後朝の恋という題で詠まれた題詠の歌である。
作者の「摂政太政大臣」は藤原良経である。関白九条兼実の子で、摂政太政大臣に至った。『新古今和歌集』の仮名序を執筆した。
三句までは『伊勢物語』第十段の「みよし野のたのむの雁もひたぶるに君が方にぞ寄ると鳴くなる」の「たのむの雁」を踏まえている。
初句「またも来ん」は、また来るであろう、の意である。雁が秋にまた渡ってくることを指す。
二句「秋をたのむの」の「たのむ」は、秋を頼みにする意と、田の面の意を掛ける掛詞である。『伊勢物語』の「たのむの雁」を用いている。
三句「雁だにも」は、雁でさえも、の意である。「だに」は軽いものを挙げて重いものを類推させる副助詞で、まして、という含みを下に残す。
四句「鳴きてぞ帰る」は、鳴いて帰ってゆく、の意で、係助詞「ぞ」が連体形「帰る」と係り結びをなす。北へ帰る雁の姿に、後朝の朝に泣いて帰る者の姿を重ねている。
結句「春の曙」は体言止めである。再会の季節の定まった雁でさえ鳴いて帰るのだから、次の逢瀬の定めのない者はなおさらである、という心が余情として残る。本巻の第千百七十七首、第千百七十八首の春の夜に続き、春の曙の別れが詠まれている。
たのむ:秋を頼みにする意と、田の面の意を掛ける
かり:雁。秋に渡来し、春に北へ帰る鳥
- 作者
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藤原良経
- 出典
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新古今和歌集
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面影の忘るまじき別れかな 名残を人の月にとどめて
- 次の歌
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誰行きて君に告げまし道芝の 露もろともに消えなましかば