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朝ぼらけおきつる霜の消えかへり
暮れ待つほどの袖を見せばや

歌の意味
夜明けに置いた霜が消えるように、起きて別れた私は消え入るばかりで、日暮れを待つあいだの涙に濡れた袖をあなたに見せたいものだ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1189

詞書「三条関白女御入内の朝に遣はしける」
 逢瀬ののち、次の夕暮れを待つ心を詠む一連の一首目である。夜明けに置いた霜が消えるように消え入る思いで、日暮れを待つあいだの涙に濡れた袖を見せたいと詠む。詞書によれば、三条関白の娘である女御が入内した翌朝に、その女御に贈った歌である。三条関白は藤原頼忠を指す。
 作者の「華山院」は花山天皇である。冷泉天皇の皇子で、在位二年足らずで出家した。

 初句「朝ぼらけ」は、夜がほのぼのと明けるころ、の意である。後朝の朝の時刻を示す。
 二句「おきつる霜の」の「おき」は、霜が置く意と、寝床から起きる意を掛ける掛詞である。本巻の第千百七十一首、第千百七十二首の露に代わって、ここでは霜が詠まれている。
 三句「消えかへり」は、すっかり消え入って、の意である。前歌の初句と同じ語で、霜が消えるように身も消え入る思いを示す。
 四句「暮れ待つほどの」は、日暮れを待つあいだの、の意である。次の逢瀬となる夕暮れを待つことをいい、ここから、夕暮れを待つ心を詠む歌が続く。
 結句「袖を見せばや」は、袖を見せたいものだ、の意で、「ばや」は自己の願望を表す終助詞である。涙に濡れた袖を見せたいという願いによって、夕暮れまでの待ち遠しさを伝えている。

あさぼらけ:夜がほのぼのと明けるころ
おく:霜が置く意と、寝床から起きる意を掛ける
じゅだい:女御などが正式に宮中に入ること
作者
花山天皇
出典
新古今和歌集
前の歌
消えかへりあるかなきかの我が身かな 恨みて帰る道芝の露
次の歌
庭に生ふる夕かげ草の下露や 暮れを待つ間の涙なるらん