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夕暮れに命かけたるかげろふの
ありやあらずや問ふもはかなし

歌の意味
夕暮れまでと命をかけている蜉蝣のようなはかない私が、生きているかいないかとお尋ねになるのも、はかないことだ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1195

詞書「今日と契りける人の、あるかと問ひて侍りければ」
 逢瀬ののち、次の夕暮れを待つ心を詠む一連の七首目である。夕暮れまでと命をかけている蜉蝣のような私に、いるかいないかと尋ねるのもはかないことだと詠む。詞書によれば、今日逢おうと約束した人が、いるかどうかと尋ねてきたのに答えた歌である。
 作者の「読人しらず」は、作者の名が伝わらないことを示す。

 初句「夕暮れに」は、夕暮れに、の意である。約束の夕暮れを指し、前歌の「暮れにやはあらぬ」を受ける。
 二句「命かけたる」は、命をかけている、の意である。夕暮れの逢瀬までを命の限りとする心で、本巻の第千百九十二首の「暮れを待つべき命」と同じ発想である。
 三句「かげろふの」は、朝に生まれて夕べに死ぬとされた蜉蝣の、の意である。はかない命のたとえとして、二句の「命かけたる」を受ける。「かけたる」と「かげろふ」の音の重なりも響き合う。
 四句「ありやあらずや」は、いるのかいないのか、の意である。詞書の「あるか」という問いをそのまま受け、生きているかどうか、の意を重ねている。
 結句「問ふもはかなし」は、尋ねるのもはかないことだ、の意である。夕暮れまでしか生きられない身にいるかどうか尋ねても甲斐がない、という返答で、相手の問いに蜉蝣の命の短さをもって応じている。

かげろふ:蜉蝣。朝に生まれて夕べに死ぬとされた虫
ちぎる:約束する
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
前の歌
大井川井堰の水のわくらはに 今日は頼めし暮れにやはあらぬ
次の歌
あぢきなくつらき嵐の声も憂し など夕暮れに待ちならひけん