今来んと頼めしことを忘れずは
この夕暮れの月や待つらん
- 歌の意味
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「すぐに行こう」と約束したことをあの人が忘れていないのなら、この夕暮れの月の出を待っているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 1203
詞書は前の歌に続き「題しらず」
来ぬ人を待つ夜を詠む一連の七首目である。すぐに行こうと約束したことをあの人が忘れていないなら、この夕暮れの月の出を待っているのだろうかと詠む。詞書は前の歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「藤原秀能」は、後鳥羽院に北面の武士として仕え、和歌所の寄人となった。承久の乱ののちに出家した。
本歌は『古今和歌集』恋歌四の素性法師の歌「今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな」である。
初句「今来んと」は、すぐに行こうと、の意である。素性法師の歌の初句をそのまま用いている。
二句「頼めしことを」は、約束したことを、の意である。素性法師の歌の「言ひしばかりに」を「頼めしことを」に替え、前の三首と同じく約束の語を受け継いでいる。
三句「忘れずは」は、忘れていないならば、の意である。相手の心を推し量る仮定で、忘れているかもしれないという不安を含む。
四句「この夕暮れの」は、この夕暮れの、の意である。素性法師の歌が有明の月まで待ち明かしたのに対し、本歌はまだ夕暮れの時点に立っている。
結句「月や待つらん」は、月の出を待っているだろうか、の意で、係助詞「や」が「らん」と係り結びをなす。相手も月の出を待って訪れようとしているのではないかと推し量り、前の二首の松風に代わって再び月が詠まれ、次歌の「山の端の月」へと続く。
たのむ:頼みに思わせる。約束する
ほくめん:院の御所の北面に詰めて警護にあたった武士
- 作者
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藤原秀能
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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頼めおく人もながらの山にだに さ夜更けぬれば松風の声
- 次の歌
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君待つと閨へも入らぬ槙の戸に いたくな更けそ山の端の月