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君待つと閨へも入らぬ槙の戸に
いたくな更けそ山の端の月

歌の意味
あなたを待つといって寝室にも入らずにいる槙の戸口に、あまりひどく夜更けの光を差さないでおくれ、山の端の月よ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1204

詞書「待つ恋といへる心を」
 来ぬ人を待つ夜を詠む一連の八首目である。あなたを待つといって寝室にも入らずにいる槙の戸口に、あまり夜更けの光を差さないでおくれ、山の端の月よと詠む。詞書によれば、待つ恋という題で詠まれた題詠の歌である。
 作者の「式子内親王」は後白河天皇の皇女である。賀茂斎院を務め、のちに出家した。藤原俊成に和歌を学び、『新古今和歌集』を代表する女流歌人の一人である。

 初句「君待つと」は、あなたを待つといって、の意である。一連の主題である待つ心を直接に示す。
 二句「閨へも入らぬ」は、寝室にも入らない、の意である。本巻の第千百九十七首の「寝なましものを」と同じく、待つ者が寝ずに起きていることを示す。
 三句「槙の戸に」は、槙の板でできた戸口に、の意である。恋人の訪れる入口であり、そこに月の光が差す。
 四句「いたくな更けそ」は、ひどく更けてくれるな、の意である。「な〜そ」は禁止を表す。月が高く昇り夜が更けるのを止めたいという願いで、夜更けは相手の来ないことを告げるものとなる。
 結句「山の端の月」は、月への呼びかけで、本巻の第千百九十八首と同じ結句である。第千百九十八首が月の出を待ったのに対し、本歌は月が更けてゆくのを惜しむ。同じ山の端の月を、出を待つ側と更けるのを止めたい側から詠み分けた対の構図である。

ねや:寝室
まきのと:槙の板で作った戸
作者
式子内親王
出典
新古今和歌集
前の歌
今来んと頼めしことを忘れずは この夕暮れの月や待つらん
次の歌
頼めぬに君来やと待つ宵の間の 更けゆかでただ明けなましかば