衣手に山おろし吹きて寒き夜を
君来まさずはひとりかも寝ん
- 歌の意味
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袖に山から吹き下ろす風が吹きつけて寒い夜なのに、あなたがおいでにならないならば、ひとりで寝ることになるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 1208
詞書は前の歌に続き「題しらず」
来ぬ人を待つ夜を詠む一連の十二首目で、一連の結びにあたる。袖に山おろしが吹きつける寒い夜に、あなたが来ないならひとりで寝ることになるのだろうかと詠む。詞書は前の歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「人麿」は柿本人麻呂である。『万葉集』を代表する歌人で、後世に歌聖と仰がれた。
初句「衣手に」は、袖に、の意である。衣手は袖をいう歌語である。
二句「山おろし吹きて」は、山から吹き下ろす風が吹いて、の意で、八音の字余りである。
三句「寒き夜を」は、寒い夜なのに、の意である。「を」は逆接の意を帯び、寒さが共寝の相手を求める心を強める。
四句「君来まさずは」は、あなたがおいでにならないならば、の意である。「来ます」は「来」の尊敬語である。前歌の「君来んと」の約束が果たされないことを受けている。
結句「ひとりかも寝ん」は、ひとりで寝ることになるのだろうか、の意で、係助詞「かも」が推量の「ん」と係り結びをなす。前歌が日々の恋しさを詠んだのに対し、本歌は寒い一夜の独り寝に焦点を絞り、来ぬ人を待つ一連を万葉の古調で締めくくっている。
ころもで:袖
やまおろし:山から吹き下ろす風
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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君来んと言ひし夜ごとに過ぎぬれば 頼まぬものの恋ひつつぞ経る
- 次の歌
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逢ふことはこれや限りのたびならん 草の枕も霜かれにけり