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偽りをただすの森の木綿襷
かけつつ誓へ我を思はば

歌の意味
偽りを糺すという名の糺の森の、神に仕える木綿襷を肩にかけて、神に誓いなさい。私のことを思っているのならば。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1220

詞書「宮仕へしける女を語らひ侍りけるに、やむごとなき男の入り立ちて言ふけしきを見て恨みけるを、女あらがひければ詠み侍りける」
 つれない人を恨み、そのつらさに耐える恋を詠む一連の一首目である。偽りを糺すという名の糺の森の木綿襷をかけて神に誓え、私を思うならば、と詠む。詞書によれば、宮仕えをする女と親しくしていたところ、身分の高い男が出入りして言い寄る様子を見て恨んだが、女が否定して言い争ったので詠んだ歌である。
 作者の「平定文」は、平好風の子で、平中と呼ばれた。『平中物語』の主人公とされる色好みの歌人である。
 糺の森は山城国の歌枕で、賀茂御祖神社、いわゆる下鴨神社の森である。「糺す」を掛けて詠まれる。木綿襷は、神事に仕える者が肩にかける木綿の襷である。

 初句「偽りを」は、偽りを、の意である。女の否定を偽りと疑う心から歌い起こす。前の一連の途絶えた恋から、相手の不実を疑い恨む恋へと主題が移る。
 二句「ただすの森の」の「ただす」は、偽りを糺す意と、糺の森を掛ける掛詞である。
 三句「木綿襷」は、神事の際に肩にかける木綿の襷である。上の句は四句の「かけ」を導く序の働きをする。
 四句「かけつつ誓へ」は、襷をかけて神に誓え、の意である。「かけ」は襷を肩にかける意に、神に誓いをかける意が重なる。命令形で四句切れとなる。
 結句「我を思はば」は、私を思っているならば、の意である。四句の命令の条件を倒置して示す。神の前で誓えと迫る強い口調で、偽りを許さない男の恨みを詠んでいる。

かたらふ:親しく交わる。男女が契りを結ぶ
あらがふ:言い争う。否定する
ただす:偽りを糺す意と、糺の森を掛ける
ゆふだすき:神事に仕える者が肩にかける木綿の襷
作者
平定文
出典
新古今和歌集
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かけて思ふ人もなけれど夕されば 面影絶えぬ玉かづらかな
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