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ただ頼めたとへば人の偽りを
重ねてこそはまたも恨みめ

歌の意味
ただ頼みにしていなさい。たとえあの人が偽りを重ねたとしても、そのときにこそ改めて恨めばよいのだ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1223

詞書「摂政太政大臣家百首歌合に、契恋の心を」
 つれない人を恨み、そのつらさに耐える恋を詠む一連の四首目である。ただ頼みにしていなさい、たとえあの人が偽りを重ねたとしても、そのときにこそ改めて恨めばよいと、自らの心に言い聞かせるように詠む。詞書によれば、藤原良経の家で催された百首歌合で、契る恋という題で詠まれた歌である。
 作者の「前大僧正慈円」は慈円である。関白藤原忠通の子で、天台座主を四度務め、歴史書『愚管抄』を著した。
 詞書の百首歌合は、いわゆる六百番歌合である。

 初句「ただ頼め」は、ただ頼みにせよ、の意で、初句切れとなる。自らの心に命じる形で、疑いを振り払おうとする。
 二句「たとへば人の」は、たとえあの人が、の意である。
 三句「偽りを」は、偽りを、の意である。本巻の第千二百二十首の初句と同じ語で、相手の不実を疑う恋が続く。
 四句「重ねてこそは」は、重ねたときにこそ、の意である。本巻の第千二百十六首では恨みが重ねられたが、本歌では偽りが重ねられることを仮定する。係助詞「こそ」が結句の已然形「め」と係り結びをなす。
 結句「またも恨みめ」は、改めて恨めばよい、の意である。第千二百二十首が偽りを疑って神に誓えと迫ったのに対し、本歌は偽りが重なるまでは信じよと自らを抑える。同じ「偽り」を正反対の態度で受け止める対の構図である。

たのむ:頼みにする。信じて任せる
作者
慈円
出典
新古今和歌集
前の歌
我ばかりつらきを忍ぶ人やあると 今世にあらば思ひあはせよ
次の歌
つらしとは思ふものから伏柴の しばしもこりぬ心なりけり