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身を知れば人の咎とは思はぬに
恨み顔にも濡るる袖かな

歌の意味
自分の身の程を知っているので、あの人のせいだとは思わないのに、恨んでいるような顔つきで、涙に濡れる袖であることよ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1231

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 つれない人を恨み、そのつらさに耐える恋を詠む一連の十二首目である。身の程を知っているので、あの人のせいとは思わないのに、恨み顔に涙に濡れる袖であることよ、と詠む。原文に作者名はなく、前歌に続いて西行の歌である。詞書も前の歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「西行法師」は、俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが、若くして出家した歌僧である。諸国を旅して多くの歌を残した。

 初句「身を知れば」は、自分の身の程を知っているので、の意である。前歌の「数ならぬ」を受け、自分が取るに足りない身であることを認める。
 二句「人の咎とは」は、あの人の過ちとは、の意である。
 三句「思はぬに」は、思わないのに、の意で、「に」は逆接である。前歌が身分によらない嘆きだと訴えたのに対し、本歌は身の程を知るゆえに相手を責めないと言う。
 四句「恨み顔にも」は、恨んでいるような顔つきで、の意である。心では恨まないのに、袖の涙が恨みを表しているように見えることをいう。
 結句「濡るる袖かな」は、涙に濡れる袖であることよ、の意で、詠嘆の「かな」で結ぶ。心と袖を分け、恨むまいとする心に反して袖が恨み顔に濡れるという、抑えきれない涙を詠んでいる。

とが:過ち。責めるべき点
うらみがほ:恨んでいるような顔つき
作者
西行
出典
新古今和歌集
前の歌
あはれとて人の心の情けあれな 数ならぬにはよらぬ嘆きを
次の歌
よしさらば後の世とだに頼めおけ つらさに堪へぬ身ともこそなれ