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昨日とも今日とも知らず今はとて
別れしほどの心まどひに

歌の意味
昨日とも今日とも分からずにいた。これが最後だと言って別れたときの、心の乱れのために。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1238

詞書「返し」
 恋の贈答を並べる一連の五首目で、前歌への返しである。これが最後だと言って別れたときの心の乱れで、昨日とも今日とも分からずにいたと答える。
 作者の「恵子女王<贈皇后宮母>」は、代明親王の娘で、前歌の作者藤原伊尹の妻である。添えられた「贈皇后宮母」は、没後に后位を贈られた人の母、の意の注記である。
 なお本文の結句は「心まどひに」とあり、読み仮名の行の「こころまよひに」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「昨日とも」は、前歌の二句「昨日今日こそ」を受けている。
 二句「今日とも知らず」で、昨日とも今日とも分からない、と続ける。男が二日を千代と数えたのに対し、女は日を数えることもできなかったと答え、時の感覚そのものを失ったことを示す。
 三句「今はとて」は、これが最後だと言って、の意である。前歌の詞書にある、二度と来まいと誓って去ったことを指す。
 四句「別れしほどの」は、別れたときの、の意である。前歌の初句「別れては」と同じ語で応じている。
 結句「心まどひに」は、心の乱れのために、の意である。分からずにいた理由を結句で明かす倒置の構成で、男の誇張に対し、心の動揺をそのまま差し出して答えている。

こころまどひ:心の乱れ、動揺
作者
恵子女王
出典
新古今和歌集
前の歌
別れては昨日今日こそ隔てつれ 千代を経たる心地のみする
次の歌
絶えぬるか影だに見えば問ふべきに 形見の水は水草ゐにけり