かたがたに引き別れつつあやめ草
あらぬねをやはかけむと思ひし
- 歌の意味
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別々の方へと引き別れて、菖蒲の根ならぬ思いもよらない泣き声を立てることになろうとは、思いもしなかった。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 1240
詞書「内に久しく参りたまはざりけるころ、五月五日、後朱雀院の御ことに」
恋の贈答を並べる一連の七首目である。菖蒲の根を引き分けるように別れ別れになって、思いもよらない泣き声を立てようとは思っていただろうか、と嘆く。詞書によれば、作者が久しく内裏に参らなかったころの五月五日に、後朱雀院のお言葉に対して詠んだ歌である。
作者の「陽明門院」は禎子内親王である。三条天皇の皇女で、後朱雀天皇の皇后となり、後三条天皇を生んだ。陽明門院は院号である。
五月五日は端午の節句で、邪気を払うために菖蒲を軒に葺き、菖蒲や蓬で作った薬玉を柱や簾に掛けた。菖蒲の根の長さを比べる根合も行われた。
初句「かたがたに」は、別々の方に、の意である。作者と後朱雀院とが離れて過ごしていることを示す。
二句「引き別れつつ」の「引き」は、菖蒲を引き抜く意を含み、三句の「あやめ草」の縁語である。菖蒲を引き分けるさまに、二人が別れ別れになることを重ねる。
三句「あやめ草」は端午の節句の景物であり、四句の「ね」を導く。
四句「あらぬねをやは」の「ね」は、菖蒲の根と、泣く音とを掛ける掛詞である。「あらぬ」は、思いもよらない、本来のものではない、の意で、節句に掛ける菖蒲の根ではなく、泣き声を立てることを言う。「やは」は反語である。
結句「かけむと思ひし」の「かく」は、節句に菖蒲の根を掛けることを言い、泣き声を立てることをそれに重ねている。四句の「やは」の反語を受けて、そんなことになろうとは思いもしなかったと結ぶ。
あやめぐさ:菖蒲、端午の節句に軒に葺き薬玉にした
ね:菖蒲の根の意と、泣く声の意を掛ける
くすだま:香料や菖蒲、蓬などを袋に入れ、五色の糸を垂らした飾り
ねあはせ:菖蒲の根の長さを比べる遊び
- 作者
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禎子内親王
- 出典
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新古今和歌集
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絶えぬるか影だに見えば問ふべきに 形見の水は水草ゐにけり
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