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葛の葉にあらぬ我が身も秋風の
吹くにつけつつうらみつるかな

歌の意味
葛の葉ではない私の身も、秋風が吹くたびに、葛の葉が裏を見せるように、あなたを恨んでいることだ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1243

詞書「后の宮久しく里におはしけるころ、遣はしける」
 秋冬の景物に寄せて疎遠を嘆く一連の三首目である。葛の葉ではない私の身も、秋風が吹くにつけて、葉が裏を見せるように恨んでいると詠む。詞書によれば、后の宮が久しく里に下がっていたころに贈った歌である。
 作者の「天暦御歌」は村上天皇である。醍醐天皇の皇子で、その治世は父の延喜の治と並んで天暦の治と称された。天暦は在位中の年号であり、天暦御歌は村上天皇の御製の意である。詞書の「后の宮」は皇后、中宮を指す語で、「里」は宮仕えを退いて帰る実家を言う。
 古今集恋五の平貞文の歌「秋風の吹き裏返す葛の葉のうらみてもなほうらめしきかな」のように、秋風に裏返る葛の葉に恨みを重ねる趣向は古くから詠まれており、この歌もその系譜に連なる。

 初句「葛の葉に」は、秋風に吹かれて白い葉裏を見せる葛の葉を挙げる。前歌の吹く風を受け、ここでは秋風が葛の葉を翻す景となる。
 二句「あらぬ我が身も」は、葛の葉ではない私の身も、の意である。「も」によって、葛の葉と同じように、と重ねる。
 三句「秋風の」は季節を示し、后の宮の久しい不在の寂しさを添える。
 四句「吹くにつけつつ」は、吹くたびごとに、の意である。「つつ」は反復で、秋風が吹くごとに恨みがつのることを示す。
 結句「うらみつるかな」の「うらみ」は、葛の葉が裏を見せる「裏見」と「恨み」とを掛ける掛詞である。天皇の身で后の不在を恨むと詠んだところに、率直な思いがにじむ。

くず:山野に生えるつる草、秋風に葉裏が白く翻る
うらむ:葛の葉が裏を見せる裏見の意と、恨む意を掛ける
さと:宮仕えする人の実家
作者
村上天皇
出典
新古今和歌集
前の歌
吹く風につけても問はむささがにの 通ひし道は空に絶ゆとも
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霜さやぐ野辺の草葉にあらねども などか人目のかれまさるらむ