古典和歌stream

玉鉾の道ははるかにあらねども
うたて雲居にまどふころかな

歌の意味
あなたのもとへの道ははるかに遠いわけではないのに、情けないことに、雲居で道に迷うように心が乱れるこのごろだ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1248

詞書「女御の下に侍りけるに遣はしける」
 宮廷の人々の贈答を並べる一連の一首目である。あなたのもとへの道は遠くないのに、雲居で迷うように心が乱れるこのごろだと詠む。詞書によれば、女御が「下」に控えていたときに贈った歌である。
 作者の「朱雀院御歌」は朱雀天皇である。醍醐天皇の皇子で、母は藤原穏子である。朱雀院は譲位後に住んだ御所の名で、朱雀院御歌は朱雀天皇の御製の意である。
 女御は次歌の第千二百四十九首で答えている。

 初句「玉鉾の」は「道」にかかる枕詞である。
 二句「道ははるかに」は、あなたのもとへの道は遠く、の意で、三句の打消に続く。
 三句「あらねども」は逆接で、遠いわけではないのに、の意である。本巻の第千二百四十四首の醍醐天皇の歌にも同じ三句「あらねども」があり、父子の御製が同じ句で理屈を立てている。
 四句「うたて雲居に」の「うたて」は、いやなことに、情けなくも、の意である。「雲居」は雲のある空であり、宮中をも指す語で、宮中にいながら雲の中で道に迷うようだという嘆きになる。
 結句「まどふころかな」は、迷うこのごろだ、の意である。近い道に迷うという矛盾に、会えない心の乱れを込めて結ぶ。

しも:ここでは女御が控えている所
くもゐ:空、また宮中
まどふ:道に迷う、心が乱れる
作者
朱雀天皇
出典
新古今和歌集
前の歌
今来むと頼めつつふる言の葉ぞ 常磐に見ゆる紅葉なりける
次の歌
思ひやる心は空にあるものを などか雲居にあひ見ざるらむ