思ひやる心は空にあるものを
などか雲居にあひ見ざるらむ
- 歌の意味
-
あなたを思いやる私の心は空にあるのに、どうして雲居の宮中で、お会いできないのだろう。
- 鑑賞
-
巻第十四 恋歌四 1249
詞書「御返し」
宮廷の人々の贈答を並べる一連の二首目で、前歌への返しである。あなたを思いやる私の心は空にあるのに、どうして雲居でお会いできないのだろうと答える。
作者の「女御熈子女王」は、醍醐天皇の皇太子であった保明親王の娘で、朱雀天皇の女御となり、昌子内親王を生んだ。
初句「思ひやる」は、離れている人を思う、の意である。
二句「心は空に」は、思いやる心が空にさまよい出ている、の意である。うわの空で落ち着かない心をも言う。
三句「あるものを」は逆接で、心は空にあるのに、と続ける。本巻の第千二百四十一首の伊勢の歌と同じ三句である。
四句「などか雲居に」は、前歌の四句「うたて雲居に」を同じ位置で受ける。心が空にあるのなら、空の雲居で会えるはずだという理屈を立てる。
結句「あひ見ざるらむ」の「らむ」は原因推量で、どうしてお会いできないのだろう、の意である。天皇が雲居に迷うと詠んだのに対し、女御は同じ雲居で会えないことを問い返し、訪れのないことをやわらかくとがめている。
おもひやる:離れている人を思う
くもゐ:空、また宮中
あひみる:会う、対面する
- 作者
-
熈子女王
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
玉鉾の道ははるかにあらねども うたて雲居にまどふころかな
- 次の歌
-
春雨の降りしくころか青柳の いとど乱れて人ぞ恋しき