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春雨の降りしくころか青柳の
いとど乱れて人ぞ恋しき

歌の意味
春雨がしきりに降るころだからだろうか。青柳の糸が乱れるように、いっそう心が乱れて、あなたが恋しい。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1250

詞書「麗景殿女御参りてのち、雨降り侍りける日、梅壺女御に」
 宮廷の人々の贈答を並べる一連の三首目である。春雨の降りしきるころだからか、青柳の糸が乱れるように、いっそう心が乱れて人が恋しいと詠む。詞書によれば、麗景殿女御が入内したのちの雨の日に、梅壺女御に贈った歌である。
 作者の「後朱雀院御歌」は後朱雀天皇である。一条天皇の皇子で、母は藤原彰子である。皇后禎子内親王との間に後三条天皇をもうけた。後朱雀院御歌は後朱雀天皇の御製の意である。詞書の「麗景殿女御」は麗景殿を局とした女御、「梅壺女御」は梅壺を局とした女御の意で、梅壺女御は次歌の作者藤原生子である。
 女御は次歌の第千二百五十一首で答えている。
 なお本文の四句は「いとど乱れて」とあり、読み仮名の行の「いとみたれつつ」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「春雨の」は、詞書にある雨の日を受ける。
 二句「降りしくころか」の「か」は疑問で、春雨がしきりに降るころだからだろうか、の意である。二句切れとなる。
 三句「青柳の」は、春雨に濡れる柳で、細い枝を糸に見立て、四句を導く。
 四句「いとど乱れて」の「いとど」は、いっそう、の意で、青柳の「糸」を掛けている。糸が乱れるさまに、心の乱れを重ねる。
 結句「人ぞ恋しき」は、「ぞ」の係り結びで「恋しき」と連体形で結ぶ。新たな女御の入内という事情の中で、梅壺女御への思いを訴えている。

ふりしく:しきりに降る
あをやぎ:芽吹いたばかりの青々とした柳
いと:いとど(いっそう)の意に、青柳の糸を掛ける
作者
後朱雀天皇
出典
新古今和歌集
前の歌
思ひやる心は空にあるものを などか雲居にあひ見ざるらむ
次の歌
青柳のいと乱れたるこのころは 一筋にしも思ひよられじ