いにしへのあふひと人はとがむとも
なほそのかみの今日ぞ忘れぬ
- 歌の意味
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昔の逢う日のなごりの枯れた葵だと人はとがめるとしても、やはり私は、その昔の今日という日を忘れてはいない。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 1254
詞書「早うもの申しける女に、枯れたる葵をみあれの日遣はしける」
宮廷の人々の贈答を並べる一連の七首目である。昔の逢う日の枯れた葵だと人はとがめても、やはりその昔の今日という日を忘れていないと詠む。詞書によれば、以前に言い交わした女に、みあれの日、枯れた葵を添えて贈った歌である。
作者の「実方朝臣」は藤原実方である。左大臣藤原師尹の孫で、藤原定時の子である。左近衛中将から陸奥守となって任地に下り、その地で没した。中古三十六歌仙の一人である。
みあれは御阿礼とも書き、賀茂祭に先立って賀茂の神を迎える神事である。賀茂祭では社殿や冠、牛車などを葵で飾ったことから、葵祭とも呼ばれた。
女は次歌の第千二百五十五首で答えている。
初句「いにしへの」は、昔の、の意で、二人が言い交わしていた過去を示す。
二句「あふひと人は」の「あふひ」は、賀茂祭の「葵」と、男女の「逢ふ日」とを掛ける掛詞である。枯れた葵を、過ぎ去った逢う日のなごりとする。
三句「とがむとも」は逆接仮定で、人がとがめても、の意である。
四句「なほそのかみの」の「そのかみ」は、その昔、の意と、賀茂の「神」とを掛ける掛詞である。
結句「今日ぞ忘れぬ」は、「ぞ」の係り結びで「忘れぬ」と連体形で結ぶ。祭の今日という日に昔の逢瀬の日を重ね、変わらぬ思いを告げている。
あふひ:賀茂祭の葵の意と、逢う日の意を掛ける
そのかみ:その昔の意と、賀茂の神の意を掛ける
みあれ:賀茂の神を迎える神事
とがむ:非難する、とがめる
- 作者
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藤原実方
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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浅緑深くもあらぬ青柳は 色変はらじといかが頼まむ
- 次の歌
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かれにけるあふひのみこそ悲しけれ あはれと見ずや賀茂の瑞垣