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かれにけるあふひのみこそ悲しけれ
あはれと見ずや賀茂の瑞垣

歌の意味
枯れてしまった葵、途絶えてしまった逢う日のことばかりが悲しい。賀茂の瑞垣よ、これをあわれとは見ないのか。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1255

詞書「返し」
 宮廷の人々の贈答を並べる一連の八首目で、前歌への返しである。枯れてしまった葵、途絶えた逢う日ばかりが悲しい、賀茂の瑞垣はあわれと見ないのか、と答える。
 作者は「読人しらず」とあり、名は伝わらない。前歌で藤原実方が歌を贈った女である。

 初句「かれにける」の「かれ」は、葵が「枯れ」る意と、仲が「離れ」る意とを掛ける掛詞である。本巻の第千二百四十四首、第千二百四十五首と同じ掛詞で、離れゆく仲を嘆く。
 二句「あふひのみこそ」は、前歌の「あふひ」を受け、葵と逢う日とを掛ける。「こそ」は三句の已然形「悲しけれ」と係り結びをなす。
 三句「悲しけれ」で三句切れとなる。
 四句「あはれと見ずや」の「や」は疑問、反語で、あわれとは見ないのか、の意である。
 結句「賀茂の瑞垣」は、呼びかけの体言止めである。前歌の「そのかみ」に掛けた神を受け、賀茂の神の瑞垣に向かって、枯れた仲をあわれと見てほしいと訴える。

かる:葵が枯れる意と、仲が離れる意を掛ける
あふひ:賀茂祭の葵の意と、逢う日の意を掛ける
みづがき:神社の周りにめぐらす垣
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
前の歌
いにしへのあふひと人はとがむとも なほそのかみの今日ぞ忘れぬ
次の歌
逢ふことをはつかに見えし月影の おぼろけにやはあはれとは思ふ