いつとてもあはれと思ふを寝ぬる夜の
月はおぼろけなくなくぞ見し
- 歌の意味
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月はいつであってもしみじみと思うものだが、あなたと共寝をした夜の月は、涙におぼろにかすみ、並々ならぬ思いで泣く泣く見たのだった。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 1258
詞書は前の歌に続き「題しらず」
月に寄せる恋を詠む一連の三首目である。月はいつ見てもしみじみとするものだが、共寝をした夜の月は涙におぼろに見え、並々でない思いで泣く泣く見たのだと詠む。詞書は前歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「中務」は、敦慶親王と伊勢の間に生まれた娘で、中務卿であった父にちなんで中務と呼ばれた女流歌人である。三十六歌仙の一人である。前歌の作者伊勢の娘の歌が、母の歌に続けて置かれている。
初句「いつとても」は、いつであっても、の意である。
二句「あはれと思ふを」は、月はしみじみと思われるものだが、の意で、「を」は逆接である。
三句「寝ぬる夜の」は、恋人と共寝をした夜の、の意である。
四句「月はおぼろけ」の「おぼろけ」は、月の「朧」と、並一通り、の意の「おぼろけ」を掛け、下の「なく」と続いて、並々でない、の意の「おぼろけなく」となる。本巻の第千二百五十六首の村上天皇の歌にも、同じ語が月とともに詠まれている。
結句「なくなくぞ見し」の「なく」は、「おぼろけなく」の「なく」と「泣く泣く」とを掛ける掛詞である。「ぞ」の係り結びで「見し」と連体形で結ぶ。涙にかすむ朧な月を、並々でない思いで泣きながら見たと、語を重ねて一気に言い下している。
おぼろけ:並一通りの意に、朧を掛ける
なく:おぼろけなくの無くの意と、泣くの意を掛ける
- 作者
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中務
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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更級や姨捨山の有明の つきずもものを思ふころかな
- 次の歌
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更級の山よりほかに照る月も なぐさめかねつこのころの空