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天の戸をおしあけがたの月見れば
憂き人しもぞ恋しかりける

歌の意味
天の戸を押し開けるように明けてゆく明け方の月を見ると、つれないあの人が、かえって恋しく思われることだ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1260

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 月に寄せる恋を詠む一連の五首目である。天の戸を押し開けるような明け方の月を見ると、つれない人がかえって恋しく思われると詠む。詞書は前歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者は「読人しらず」とあり、名は伝わらない。

 初句「天の戸を」は、天の門、空の戸のことで、夜が明けることを天の戸が開くと見なす。
 二句「おしあけがたの」の「あけ」は、天の戸を押し「開け」る意と、「明け方」とを掛ける掛詞である。
 三句「月見れば」は、明け方に残る月を見ると、の意である。
 四句「憂き人しもぞ」は、つれない人がかえって、の意である。「しも」は強意で、ほかならぬ憂き人が、と強める。「ぞ」は結句の「ける」と係り結びをなす。
 結句「恋しかりける」は、恋しく思われることだ、の意である。明け方の月は恋人との別れを思わせる景であり、つれない人であるのに恋しいという心の矛盾を月に寄せて詠む。次歌の「月を恋しと」へと、月と恋しさの取り合わせが続く。

あまのと:天の門、空の戸
あく:戸を開ける意と、夜が明ける意を掛ける
うきひと:つれない人、自分につらく当たる人
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
前の歌
更級の山よりほかに照る月も なぐさめかねつこのころの空
次の歌
ほの見えし月を恋しと帰るさの 雲路の波に濡れて来しかな