ほの見えし月を恋しと帰るさの
雲路の波に濡れて来しかな
- 歌の意味
-
ほのかに見えた月を恋しく思いながら、帰り道の雲路の波に濡れて、帰ってきたことだ。
- 鑑賞
-
巻第十四 恋歌四 1261
詞書は前の歌に続き「題しらず」
月に寄せる恋を詠む一連の六首目である。ほのかに見えた月を恋しく思いながら帰る雲路の波に、濡れて帰ってきたと詠む。詞書は前歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
原文には作者名がなく、前歌に続いて「読人しらず」の歌であり、名は伝わらない。
初句「ほの見えし」は、ほのかに見えた、の意である。月にたとえた恋人の姿を、わずかに見たことを示す。
二句「月を恋しと」は、その月を恋しく思って、の意である。前歌の「月見れば」「恋しかりける」を受け、月と恋しさとを一句に収める。
三句「帰るさの」の「さ」は、〜するとき、の意で、帰り道の、の意である。
四句「雲路の波に」は、雲の中の道を空の海に見立て、雲を波とする。
結句「濡れて来しかな」は、濡れて帰ってきたことだ、の意である。雲路の波に濡れたという見立ての中に、別れの涙に濡れた袖を思わせて結ぶ。
かへるさ:帰り道、帰るとき
くもぢ:雲の中の道、空の通い路
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
天の戸をおしあけがたの月見れば 憂き人しもぞ恋しかりける
- 次の歌
-
入る方はさやかなりける月影を うはのそらにも待ちし宵かな