今はとて別れしほどの月をだに
涙にくれてながめやはせし
- 歌の意味
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これが最後だと言って別れたときの月さえも、涙に目がくらんで、眺めることができただろうか。いや、できはしなかった。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 1264
詞書「題しらず」
月に寄せる恋を詠む一連の九首目である。これが最後と別れたときの月さえ、涙にくれて眺めることはできなかったと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「藤原経衡」は、平安時代中期の歌人である。
初句「今はとて」は、これが最後だと言って、の意である。本巻の第千二百三十八首の恵子女王の歌の三句と同じ語である。
二句「別れしほどの」は、別れたときの、の意である。恵子女王の歌の四句と同じ句で、初句と合わせて二句がそのまま重なる。
三句「月をだに」の「だに」は、〜さえ、の意である。別れのときの月は、せめて形見として見ておきたいものであることを示す。
四句「涙にくれて」の「くれ」は、涙で目の前が暗くなる、の意である。
結句「ながめやはせし」の「やは」は反語で、眺めただろうか、いや眺められなかった、の意である。恵子女王が別れの心の乱れで日も分からなかったと詠んだのに対し、ここでは月さえ見えなかったと、同じ別れの場面を月の側から詠んでいる。
くる:涙で目の前が暗くなる
ながむ:もの思いにふけって見やる
- 作者
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藤原経衡
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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さして行く山の端もみなかき曇り 心の空に消えし月影
- 次の歌
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面影の忘れぬ人によそへつつ 入るをぞ慕ふ秋の夜の月