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憂き人の月はなにぞのゆかりぞと
思ひながらもうちながめつつ

歌の意味
つれないあの人と月とは、いったい何のゆかりがあるのかと思いながらも、つい月を眺め続けてしまう。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1266

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 月に寄せる恋を詠む一連の十一首目である。つれない人と月にどんな縁があるのかと思いながらも、つい月を眺めてしまうと詠む。詞書は前歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「後徳大寺左大臣」は藤原実定である。右大臣藤原公能の子で、左大臣に至った。祖父の徳大寺左大臣藤原実能と区別して、後徳大寺左大臣と呼ばれた。

 初句「憂き人の」は、つれない人の、の意である。本巻の第千二百六十首の四句「憂き人しもぞ」と同じ語で、つれない人を月に結ぶ。
 二句「月はなにぞの」は、月は何の、の意で、三句に続く。
 三句「ゆかりぞと」は、縁があるのかと、の意である。月を見るとつれない人が思われることを、理屈の上で問う。
 四句「思ひながらも」は、そう思いながらも、の意で、理屈と心の動きとのずれを示す。
 結句「うちながめつつ」は、ついもの思いにふけって眺め続ける、の意である。「つつ」で言いさして結び、理屈では割り切れず月を見続けてしまう心の余情を残す。月に恋人を見る一連の中で、その見立てそのものを疑ってみせる趣向である。

ゆかり:縁、つながり
うちながむ:ついもの思いにふけって見やる
作者
藤原実定
出典
新古今和歌集
前の歌
面影の忘れぬ人によそへつつ 入るをぞ慕ふ秋の夜の月
次の歌
月のみやうわのそらなる形見にて 思ひも出でば心通はむ