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月のみやうわのそらなる形見にて
思ひも出でば心通はむ

歌の意味
月だけが、空の上にある頼りない形見であって、あの人もこの月を見て私を思い出してくれるなら、二人の心は通い合うだろうか。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1267

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 月に寄せる恋を詠む一連の十二首目である。空に浮かぶ月だけが頼りない形見で、あの人も月を見て思い出してくれるなら心が通うだろうかと詠む。詞書は前歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「西行法師」は、俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが、二十三歳で出家し、諸国を旅して歌を詠んだ。

 初句「月のみや」の「のみ」は限定、「や」は疑問で、月だけが、の意である。
 二句「うわのそらなる」の「うわのそら」は、空の上にある意と、頼りなく落ち着かない意とを掛ける掛詞である。本巻の第千二百六十二首の紫式部の歌の四句と同じ語である。
 三句「形見にて」は、思い出のよすがであって、の意である。遠く離れた二人が同じ月を見ることで、月を共通の形見とする。
 四句「思ひも出でば」は、もしあの人も思い出してくれるなら、の意の仮定である。
 結句「心通はむ」は、心が通い合うだろう、の意である。初句の「や」を受けて、それで心は通うのだろうかという願いと不安とを込めて結ぶ。

うわのそら:空の上の意と、頼りなく落ち着かないさまの意を掛ける
かたみ:思い出のよすがとなる物
かよふ:心が通じ合う
作者
西行
出典
新古今和歌集
前の歌
憂き人の月はなにぞのゆかりぞと 思ひながらもうちながめつつ
次の歌
隈もなき折しも人を思ひ出でて 心と月をやつしつるかな