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曇れかしながむるからに悲しきは
月におぼゆる人の面影

歌の意味
いっそ曇ってしまえばよい。眺めるそばから悲しいのは、月に思い浮かぶあの人の面影なのだ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1270

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 月に寄せる恋を詠む一連の十五首目である。いっそ曇ってしまえ、眺めるだけで悲しいのは月に浮かぶあの人の面影だと詠む。詞書は前歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「八条院高倉」は、鳥羽天皇の皇女八条院暲子内親王に仕えた女房である。

 初句「曇れかし」の「かし」は念を押す助詞で、曇ってしまえ、の意である。初句切れで、月に向かって強く呼びかける。本巻の第千二百六十八首で西行が曇りのない月を自らやつしたと詠んだのに対し、ここでははじめから月の曇ることを願う。
 二句「ながむるからに」の「からに」は、〜するとすぐに、〜するだけで、の意である。
 三句「悲しきは」は、悲しいのは、の意で、結句の体言へと続く。
 四句「月におぼゆる」の「おぼゆ」は、自然に思い出される、の意である。
 結句「人の面影」は体言止めである。月を眺めると面影が浮かぶので曇れと願うという倒置の構成で、本巻の第千二百六十五首で肥後が面影の人になぞらえて月を慕ったのとは、反対の心の向きを示している。

おぼゆ:自然に思われる、思い出される
おもかげ:目に浮かぶ姿
作者
八条院高倉
出典
新古今和歌集
前の歌
もの思ひてながむるころの月の色に いかばかりなるあはれ染むらむ
次の歌
忘らるる身を知る袖の村雨に つれなく山の月は出でけり