忘らるる身を知る袖の村雨に
つれなく山の月は出でけり
- 歌の意味
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忘れられてゆく我が身のほどを知って涙に濡れる袖に、村雨が降りかかるなか、何事もないかのように山の月は出たことだ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 1271
詞書「百首歌の中に」
月に寄せる恋を詠む一連の十六首目である。忘れられる身のほどを知って涙に濡れる袖に村雨が降るなか、山の月は素知らぬ顔で出たと詠む。詞書によれば、百首歌の中の一首である。
作者の「太上天皇」は後鳥羽院である。高倉天皇の皇子で、譲位後に院政を行い、新古今和歌集の撰進を命じた。太上天皇は譲位した天皇の称で、本集成立時の院である後鳥羽院を指す。
古今集恋四の在原業平の歌「かずかずに思ひ思はず問ひがたみ身を知る雨は降りぞまされる」を踏まえる。この歌は『伊勢物語』にも見え、「身を知る雨」は、我が身の不運を思い知らせるように降る雨を言う。
初句「忘らるる」の「るる」は受身で、恋人に忘れられてしまう、の意である。
二句「身を知る袖の」は、業平の歌の「身を知る雨」を踏まえ、我が身のほどを思い知って涙に濡れる袖、の意とする。
三句「村雨に」は、ひとしきり降って過ぎる雨である。袖を濡らす涙を村雨に重ねる。
四句「つれなく山の」の「つれなく」は、素知らぬ顔で、平然と、の意である。涙の雨をよそに出る月に、つれない恋人の姿を重ねる。
結句「月は出でけり」の「けり」は気づきの詠嘆である。袖の村雨と、平然と出る山の月との対照で結ぶ。本巻の第千二百七十首で曇れと願われた月が、ここでは雨の中にも曇らず出ている。
むらさめ:ひとしきり強く降って過ぎる雨
つれなし:素知らぬ顔である、冷淡である
- 作者
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後鳥羽院
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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曇れかしながむるからに悲しきは 月におぼゆる人の面影
- 次の歌
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めぐりあはむ限りはいつと知らねども 月な隔てそよその浮雲