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今来むと契りしことは夢ながら
見し夜に似たる有明の月

歌の意味
すぐに行こうと約束したことは夢のようにはかなく消えてしまったが、あの人と逢った夜に似ている、有明の月よ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1276

詞書は前の歌に続き「千五百番歌合に」
 月に寄せる恋を詠む一連の二十一首目である。すぐに行くと約束したことは夢のように消えたが、有明の月だけは逢った夜に似ていると詠む。詞書は前歌に続き、千五百番歌合に出詠した歌である。
 作者の「右衛門督通具」は源通具である。内大臣源通親の子で、源通光の兄にあたる。新古今和歌集の撰者の一人で、右衛門督は本集成立時の官職である。
 古今集恋四の素性の歌「今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな」を本歌とする。

 初句「今来むと」は、本歌の初句と同じで、すぐに行こう、の意である。本巻の第千二百四十七首の村上天皇の歌も同じ初句で始まる。
 二句「契りしことは」は、約束したことは、の意である。本歌の「言ひしばかりに」を、契りという重い語に言い換えている。
 三句「夢ながら」は、夢のままで、夢のようにはかなく、の意である。約束が現実にならなかったことを示す。
 四句「見し夜に似たる」は、逢った夜に似ている、の意である。「見る」は男女が逢うことを言う。約束は夢となったが、月だけはかつての逢瀬の夜と同じだという対比である。
 結句「有明の月」は、本歌の「有明の月」を受けた体言止めである。本歌では約束を信じて有明の月まで待ち明かしたが、ここでは待つこと自体が夢に終わり、残った月が逢瀬の夜を思い出させる。

ちぎる:約束する
みる:男女が逢う、契りを結ぶ
ありあけ:夜が明けても月が空に残っていること、またその月
作者
源通具
出典
新古今和歌集
前の歌
幾めぐり空行く月も隔てきぬ 契りし中はよその浮雲
次の歌
忘れじと言ひしばかりのなごりとて その夜の月はめぐり来にけり