古典和歌stream

忘るなよ今は心の変はるとも
慣れしその夜の有明の月

歌の意味
忘れないでくれ。今はあの人の心が変わってしまったとしても、慣れ親しんだあの夜の有明の月よ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1279

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 月に寄せる恋を詠む一連の二十四首目である。今はあの人の心が変わったとしても、慣れ親しんだあの夜の有明の月よ、忘れないでくれと詠む。詞書は前歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「家隆朝臣」は藤原家隆である。藤原光隆の子で、藤原俊成に歌を学び、新古今和歌集の撰者の一人となった。のちに従二位に至り、壬生二品と呼ばれた。

 初句「忘るなよ」は、忘れないでくれ、の意の初句切れである。本巻の第千二百七十二首の良経の歌が踏まえた橘忠幹の歌「忘るなよほどは雲居になりぬとも空行く月のめぐりあふまで」と同じ初句である。
 二句「今は心の」は、今はあの人の心が、の意である。
 三句「変はるとも」は逆接仮定で、変わってしまったとしても、の意である。
 四句「慣れしその夜の」は、慣れ親しんだあの夜の、の意である。本巻の第千二百七十七首の四句「その夜の月は」と同じく、逢瀬の夜を指す。
 結句「有明の月」は、呼びかけの体言止めである。人の心は変わっても、せめて月だけはあの夜を覚えていてほしいと、倒置によって月に訴えている。前歌で月に尋ねたのに対し、ここでは月に忘れるなと頼んでいる。

なる:慣れ親しむ
ありあけ:夜が明けても月が空に残っていること、またその月
作者
藤原家隆
出典
新古今和歌集
前の歌
思ひ出でて夜な夜な月に尋ねずは 待てと契りし中や絶えなむ
次の歌
そのままに松の嵐も変はらぬを 忘れやしぬる更けし夜の月