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人ぞ憂き頼めぬ月はめぐり来て
昔忘れぬ蓬生の宿

歌の意味
あの人こそつらい。約束もしなかった月はめぐってきて、昔を忘れずに訪れる、蓬の生い茂ったこの宿よ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1281

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 月に寄せる恋を詠む一連の二十六首目である。約束もしなかった月はめぐってきて昔を忘れずに訪れるのに、あの人こそつらいと、蓬の茂る宿で詠む。詞書は前歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「藤原秀能」は、後鳥羽院に北面の武士として仕え、歌人としても重んじられた人物で、承久の乱の後に出家して如願と号した。

 初句「人ぞ憂き」は、あの人こそつらい、の意の初句切れである。「ぞ」の結びで「憂き」は連体形となる。
 二句「頼めぬ月は」の「頼め」は、あてにさせる、の意で、約束もしなかった月は、の意である。約束しながら来ない人と対比させる。
 三句「めぐり来て」は、本巻の第千二百七十七首の結句「めぐり来にけり」と同じく、月の再来を言う。
 四句「昔忘れぬ」は、昔を忘れない、の意である。前歌の「忘れやしぬる」という問いに、月は忘れていないと答える形となる。
 結句「蓬生の宿」は体言止めである。蓬の生い茂る宿は、人の訪れが絶えて荒れた家を表し、次歌から始まる荒れた宿の一連へと橋渡しをしている。

たのむ:あてにさせる、約束する
よもぎふ:蓬の生い茂った所、荒れた家
作者
藤原秀能
出典
新古今和歌集
前の歌
そのままに松の嵐も変はらぬを 忘れやしぬる更けし夜の月
次の歌
わくらばに待ちつる宵も更けにけり さやは契りし山の端の月