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わくらばに待ちつる宵も更けにけり
さやは契りし山の端の月

歌の意味
たまさかに訪れを約束されて待っていた宵も、更けてしまった。こんなにも遅くなると約束しただろうか、山の端の月よ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1282

詞書「八月十五夜和歌所にて月前恋といふことを」
 月に寄せる恋を詠む一連の二十七首目である。たまさかに訪れを約束されて待っていた宵も更けてしまった、こんなに遅く出ると約束しただろうか、山の端の月よ、と詠む。詞書によれば、八月十五夜に和歌所で月前恋の題で詠んだ歌である。
 作者の「摂政太政大臣」は藤原良経である。関白九条兼実の子で、摂政、太政大臣に至り、後京極摂政と呼ばれた。新古今和歌集の仮名序を執筆した。
 和歌所は、後鳥羽院が建仁元年(1201)に院の御所に設けた和歌の役所で、新古今和歌集の撰集が行われた場である。八月十五夜は中秋の名月の夜で、古くから月を賞する夜とされた。

 初句「わくらばに」は、たまさかに、まれに、の意である。めったにない訪れの約束であったことを示す。
 二句「待ちつる宵も」は、待っていた宵も、の意である。
 三句「更けにけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、更けてしまった、の意の三句切れである。
 四句「さやは契りし」の「さ」は、そのように、「やは」は反語で、そのように約束しただろうか、の意である。
 結句「山の端の月」は、呼びかけの体言止めである。名月の夜に月の出の遅さをなじる形をとりながら、約束して来ない恋人への恨みを重ねている。月前恋の題を、月と人との二重の待つ心で詠みこなしている。

わくらば:たまさかに、まれに
やまのは:山の稜線、空と接するあたり
作者
藤原良経
出典
新古今和歌集
前の歌
人ぞ憂き頼めぬ月はめぐり来て 昔忘れぬ蓬生の宿
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来ぬ人を待つとはなくて待つ宵の 更けゆく空の月もうらめし