来ぬ人を待つとはなくて待つ宵の
更けゆく空の月もうらめし
- 歌の意味
-
来ない人を待つというつもりでもなく、それでも待っている宵の、更けてゆく空の月までも恨めしい。
- 鑑賞
-
巻第十四 恋歌四 1283
詞書は前の歌に続き「八月十五夜和歌所にて月前恋といふことを」
月に寄せる恋を詠む一連の二十八首目である。来ない人を待つつもりでもなく待っている宵の、更けてゆく空の月までも恨めしいと詠む。詞書は前歌に続き、八月十五夜に和歌所で月前恋の題で詠んだ歌である。
作者の「有家朝臣」は藤原有家である。藤原重家の子で、新古今和歌集の撰者の一人である。朝臣は五位以上の者に付ける敬称である。
初句「来ぬ人を」は、来ない人を、の意である。
二句「待つとはなくて」は、待つというつもりではなくて、の意である。来ないと分かっている人を待っているとは認めたくない心を示す。
三句「待つ宵の」で、同じ「待つ」を重ねる。待つつもりはないと言いながら、結局は待っているという矛盾が、同語の反復によって浮かび上がる。
四句「更けゆく空の」は、前歌の三句「更けにけり」を受け、夜の更けてゆくさまを示す。
結句「月もうらめし」の「も」は、人ばかりでなく月までも、の意である。前歌で月の出の遅さをなじったのに対し、ここでは更けてゆく夜の月までも恨めしいと詠み、恨みを月にまで広げている。
うらめし:恨めしい、恨みに思う
- 作者
-
藤原有家
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
わくらばに待ちつる宵も更けにけり さやは契りし山の端の月
- 次の歌
-
松山と契りし人はつれなくて 袖越す波に残る月影