形見とてほの踏み分けし跡もなし
来しは昔の庭の荻原
- 歌の意味
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形見としてかすかに踏み分けた跡さえも残っていない。あの人が通ってきたのは昔のことで、今は庭一面の荻原ばかりだ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 1289
詞書は前の歌に続き「題しらず」
荒れた宿に訪れのない恋を詠む一連の五首目である。形見としてかすかに踏み分けた跡さえもなく、あの人が通ったのは昔のことで、今は庭一面の荻原だと詠む。詞書は前歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「藤原保季朝臣」は、鎌倉時代初期の歌人である。朝臣は五位以上の者に付ける敬称である。
初句「形見とて」は、形見として、の意である。恋人の通った足跡を形見と見なす。
二句「ほの踏み分けし」は、かすかに草を踏み分けた、の意である。
三句「跡もなし」は、その跡さえもない、の意の三句切れである。本巻の第千二百八十六首の初句「跡絶えて」と同じく、訪れの跡が消えたことを言う。
四句「来しは昔の」は、あの人が通ってきたのは昔のことで、の意である。
結句「庭の荻原」は体言止めである。本巻の第千二百八十五首の「庭の蓬生」、第千二百八十六首の「庭の白露」と同じく「庭の」で結び、蓬、浅茅、白露に続いて荻原を挙げて、荒れた庭の景を重ねている。
ふみわく:草などを踏み分けて進む
をぎ:水辺などに生えるススキに似た草
をぎはら:荻の生い茂った原
- 作者
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藤原保季
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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尋ねても袖にかくべき方ぞなき 深き蓬の露のかことを
- 次の歌
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名残をば庭の浅茅にとどめ置きて 誰ゆゑ君が住みうかれけむ