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忘れゆく人ゆゑ空をながむれば
絶え絶えにこそ雲も見えけれ

歌の意味
私を忘れてゆく人のために空を眺めていると、あの人との仲と同じように、雲も途切れ途切れに見えることだ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1295

詞書「二条院御時、艶書の歌召しけるに」
 忘れられてゆく恋を詠む一連の五首目である。忘れてゆく人のために空を眺めると、雲も途切れ途切れに見えると詠む。詞書によれば、二条天皇の御代に、恋文の歌を召されたときの歌である。
 作者の「刑部卿範兼」は藤原範兼である。刑部卿に至り、歌学者として『和歌童蒙抄』を著した。詞書の「艶書」は恋文のことで、二条院は二条天皇を指す。

 初句「忘れゆく人」は、しだいに自分を忘れてゆく人、の意である。一連の主題を初句で直接に示す。
 二句「人ゆゑ空を」の「ゆゑ」は、〜のために、の意である。
 三句「ながむれば」は、もの思いにふけって眺めると、の意である。前歌までの空の雲を受け、雲を見る人を詠む。
 四句「絶え絶えにこそ」は、途切れ途切れに、の意である。「こそ」は結句の已然形「見えけれ」と係り結びをなす。
 結句「雲も見えけれ」の「も」は、二人の仲と同じく雲も、の意である。途絶えがちな仲を、途切れ途切れの雲に見いだして結ぶ。

えんしょ:恋文、懸想文
ながむ:もの思いにふけって見やる
たえだえ:途切れ途切れであるさま
作者
藤原範兼
出典
新古今和歌集
前の歌
思ひ出でよ誰がかねごとの末ならむ 昨日の雲の跡の山風
次の歌
忘れなば生けらむものかと思ひしに それもかなはぬこの世なりけり