今ぞ知る思ひ出でよと契りしは
忘れむとての情けなりけり
- 歌の意味
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今こそ分かった。思い出してくれと約束したのは、私を忘れようとしての情けであったのだ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 1298
詞書は前の歌に続き「題しらず」
忘れられてゆく恋を詠む一連の八首目で、一連の最後の歌である。思い出してくれと約束したのは、忘れようとしての情けであったと今こそ分かったと詠む。詞書は前歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
原文には作者名がなく、前歌に続いて西行の歌である。西行は俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが、二十三歳で出家し、諸国を旅して歌を詠んだ。
なお本文の冒頭には「〈墨〉°」の記号があるが、歌の本文ではないため除いた。
初句「今ぞ知る」は、今こそ分かった、の意の初句切れである。「ぞ」の結びで「知る」は連体形となる。
二句「思ひ出でよと」は、思い出してくれと、の意である。本巻の第千二百九十四首の家隆の歌の初句「思ひ出でよ」と同じ語で、そこでは作者が相手に向けた言葉であったが、ここでは相手が作者に残した言葉となっている。
三句「契りしは」は、約束したのは、の意である。
四句「忘れむとての」は、忘れようとしての、の意である。思い出してくれという言葉は、相手自身が忘れるつもりであったからこそ出たものだと解き明かす。
結句「情けなりけり」の「けり」は気づきの詠嘆である。別れの言葉の裏にある思いやりと冷たさとを同時に見抜き、忘れられてゆく恋の一連を、理に落とした悟りで結んでいる。
ちぎる:約束する
なさけ:思いやり、情愛
- 作者
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西行
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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疎くなる人を何とて恨むらむ 知られず知らぬ折もありしに
- 次の歌
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逢ひ見しは昔語りのうつつにて そのかねごとを夢になせとや