あはれとて問ふ人のなどなかるらむ
もの思ふ宿の荻の上風
- 歌の意味
-
かわいそうにと言って訪ねてくれる人が、どうしていないのだろう。もの思いに沈むこの宿には、荻の葉の上を吹く風ばかりが訪れる。
- 鑑賞
-
巻第十四 恋歌四 1307
詞書は前の歌に続き「題しらず」
風に寄せて恋人を待つ心を詠む一連の四首目である。かわいそうにと訪ねてくれる人がどうしていないのか、もの思いに沈む宿には荻の上風ばかりが訪れると詠む。詞書は前歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「西行法師」は、俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが、二十三歳で出家し、諸国を旅して歌を詠んだ。
初句「あはれとて」は、かわいそうにと言って、の意である。
二句「問ふ人のなど」は、訪ねてくれる人がどうして、の意で、三句に続く。
三句「なかるらむ」の「らむ」は原因推量で、どうしていないのだろう、の意の三句切れである。
四句「もの思ふ宿の」は、もの思いに沈む宿の、の意である。
結句「荻の上風」は、荻の葉の上を吹き渡る風で、体言止めである。荻の葉ずれの音は人の訪れを思わせる音として詠まれてきた。人は訪れず、風だけが訪れるという対比で結ぶ。本巻の第千三百九首の式子内親王の歌も同じ結句で結ばれている。
とふ:訪ねる、見舞う
をぎ:水辺などに生えるススキに似た草
うはかぜ:草木の葉の上を吹き渡る風
- 作者
-
西行
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
心にはいつもあきなる寝覚めかな 身にしむ風の幾夜ともなく
- 次の歌
-
我が恋は今を限りとゆふまぐれ 荻吹く風のおとづれて行く