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今はただ心のほかに聞くものを
知らず顔なる荻の上風

歌の意味
今はもうただ心にもとめずに聞き流しているのに、そうとも知らぬ顔で吹いてくる、荻の上風よ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1309

詞書「題しらず」
 風に寄せて恋人を待つ心を詠む一連の六首目である。今はもう心にもとめずに聞いているのに、そうとも知らぬ顔で荻の上風が吹いてくると詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「式子内親王」は、後白河天皇の皇女で、若くして賀茂の斎院を務めた。藤原俊成に和歌を学んだ。

 初句「今はただ」は、今はもうただ、の意である。人を待つことをやめた今の心を示す。
 二句「心のほかに」は、心にもとめずに、無関心に、の意である。
 三句「聞くものを」の「ものを」は逆接で、聞いているのに、の意である。前歌で恋の終わりを告げた風の音を、今は聞き流していると受ける。
 四句「知らず顔なる」は、そうとも知らないような顔をした、の意である。風を擬人化し、こちらの心変わりにも気づかず、なお人の訪れのように吹いてくると見る。
 結句「荻の上風」は、本巻の第千三百七首の西行の歌と同じ結句である。西行の歌では人の代わりに訪れる風を嘆いたが、ここでは聞き流しているはずの風が、なお心をかき乱すことを、知らず顔という擬人で示している。

しらずがほ:知らないふりをした顔つき
うはかぜ:草木の葉の上を吹き渡る風
作者
式子内親王
出典
新古今和歌集
前の歌
我が恋は今を限りとゆふまぐれ 荻吹く風のおとづれて行く
次の歌
いつも聞くものとや人の思ふらむ 来ぬ夕暮れの秋風の声